Lesson 6 – Main Text

Characteristics of the Japanese Language – 日本語の特徴

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「日本語は何とむずかしいことばだろう!」日本語を勉強する学生は一度や二度は必ずそう思ったことがあるだろう。スペイン語やフランス語には英語と同じことばや似ていることばがたくさんあるのに、日本語には全くない。英語と関係があるのは、英語から来た外来語くらいのものだ。しかし、それも発音日本風になっているから、説明を聞かなくてはたいてい意味が分からない。文字について考えてみても、ひらがな、カタカナ、漢字という三種類の文字を同時に使うのは、世界中で日本語だけである。日本人は、なれてしまっているが、外国人が見ておどろくのは当たり前である。

英語がどんなふうに発達してきたかという歴史は、学者研究によってはっきりしているが、日本語についてはまだよく分かっていない。ことばというものは、始めに話しことばがあって、後でそれを書き表わす文字が生まれるものである。だから日本語にもは文字がなかった。中国で発明された漢字を輸入して初めて日本語を書き表わすことが出来るようになったのである。

漢字の輸入は三世紀ごろから始まっていたが、始めは漢字を使って中国語を書くだけであった。それはヨーロッパで昔、本を書く時にラテン語が使われたのに似ている。しかしその後、漢字を使って自分達のことばである日本語を書き表わすようになったのである。そのために日本人は、「」と「」と呼ばれる漢字の二つの読み方を考え出した。

音は、漢字を中国語の発音(または、それに近い発音)で読む方法である。たとえば、「学」を「がく」、「生」を「せい」と読むことである。これによって「学生」というような中国語のことばをそのまま日本語として使うことが出来るようになった。

また意味とは関係なく漢字の音だけを使うことによって、日本語の発音を書き表わすということも行なわれた。たとえば、左はsa、久はku、良はra という音を持っているから、「左久良」と書いて、sakura と読むのである。この方法によって、日本語の発音は、全部漢字で書き表わせるようになったが、一々漢字を書くのはめんどうであるし、左(=ひだり)とか良い(=よい)という漢字の意味は、この場合じゃまになる。そこで、だんだんこの漢字が簡単に書かれるようになった。このようにして「さ」、「く」、「ら」などの「ひらがな」が十世紀ごろまでに出来上がったのである。一方、カタカナは仏教を学ぶお坊さん達の間で発達したものである。できるだけはやく簡単に書くことが目的で、漢字の一部分がカタカナになっている場合が多い。だから、ひらがなのような文字としての美しさはない。

もう一つの読み方の訓というのは「学」という漢字の意味を考えて、「まなぶ」という日本語を当てて読むことである。そして「」という漢字を「さくら」と読めば、もう以前のように「左久良」と書く必要もなくなるのである。以上のように、日本語は、「学生」、「大学」などで使われる「音」と、学(まなぶ)、桜(さくら)などの漢字の「訓」と、「かな」という三つの方法によって、自由に書き表わすことが出来るようになったのである。

ずっと後の時代の話しであるが、明治になって日本に西洋文化が入ってきた時、今まで東洋にはなかった物事を書き表わすために、漢字の音を組み合わせて科学(=science)、社会(=society)、哲学(=philosophy)などの新しいことばが日本でたくさん作られた。これは漢字がなければ、そして音という方法がなければ、出来なかったことである。このようにして作られた新しいことばは、今度は反対に中国語の中に入っていった。

漢字の一番の特徴は、物の形つまり絵から作られたということである。日や月のように分かりやすいものもあれば、鳥のように、形が変わってしまって、ちょっと見ただけでは分からないものもある。また一、二や上、下などは物の関係を示している。さらに、美(しい)、名、困(る)、旅(行)などのように、いくつかの部分を組み合わせて、一つの意味を表わしたものも多い。

このように、漢字は「意味を表わす」文字であるが、アルファベットのように「を表わす」だけの場合も多いことを忘れてはならない。たとえば、時、持の左の部分は、それぞれ日、手(扌)で、意味を示しているが、右の部分は「じ」という音を示しているだけである。80パーセントの漢字はこの種類のものである。この場合の「日」「手(扌)」は部首と呼ばれていて、その中の、よく使われるものを知っていれば、少しは漢字が覚えやすくなるだろう。つまり、時、晴れ、明(あか)るいなどは「日」に関係のある漢字であり、海、流れる、泳ぐ、酒などは「水」に関係がある。このほか、土(場)、言(話し)、食(飯)、心(思う)などたくさんある。

次に文字以外の特徴について、ちょっと考えてみよう。学校の先生がテストの日に、こんなふうに言ったら、学生達はどう思うだろうか。「今日はテストをしない…と言ったら、みなさんが喜ぶだろう…と思ったので、来週することにしよう…かと思ったが、やはり今日やることにしました」学生は喜んだり、がっかりしたりして、忙しい。日本語では大切なことばはの一番終わりに来る。するか、しないか終わりまで聞かなくては分からないのである。

はい、いいえの使い方も英語とは違う。「あの映画、見なかったの」と質問されたら、「うん、見なかった」または「いや、見たよ」と答える。はいか、いいえかは、質問の仕方によって決まるわけである。このことから、日本語は相手の気持ちを中心に考えることばだと言う人もいるが、この答え方については中国語や韓国語も同じだそうである。それよりも問題なのは、この「はい」の意味が広いということだろう。「はい、本当にそうですねえ」と言っておきながら、色々な理由をならべて、「だから、ちょっと違うかも知れませんよ。私は、違うように思います。いや、ぜんぜん違いますよ」と最後にはまったく反対の「いいえ」になってしまうこともないとは言えない。日本人は外国人との話し合いで、ごかい起きないように、はい、いいえをなるべくはっきり使うようにする必要があるだろう。

このほか、男女のことばの区別敬語も大きな特徴だが、敬語は、日本の社会が変わってきているため、だんだん簡単になってきている。またワープロやコンピューターを使うようになってから、自分で漢字を書く必要がなくなったため、漢字を忘れてしまうという日本人もいる。これから、日本語を使う外国人がもっと多くなれば、日本語を教える設備技術も発達し、日本語は今よりは勉強しやすいものに変わっていくであろう。