Lesson 7 – Main Text

On Ethnic Conflict – 民族の問題

白人男性ブロンドは6フィート、年は25くらい」たとえば、人を殺して逃げている犯人について、アメリカの新聞で説明すると、こんなふうに書かれるだろう。しかし、これが日本であれば、人種やかみの色の説明は必要ない。特別な場合をのぞけばはだの色はだいたい同じで、かみの色もお年寄り以外は黒しかないからである。

これは、日本という国が、ほとんど日本民族だけによって出来上がっていること、これと反対にアメリカは色々な人種や民族から作られているということを示している。アメリカに来たばかりの日本人が、車のめんきょを取る場合などに目の色は?と聞かれると、いったい自分の目の色は黒だろうか、茶色だろうかと考えて、困ってしまう。日本語でも、白人について「青い目の外国人」ということばを使うことはあるが、普通日本人は目の色など考えたこともないのである。

そんな日本人でもアメリカに人種問題のあることは知っている。テレビや映画や音楽を通してアメリカを知っているし、アメリカを旅行する人も多い。しかし、アメリカ人と言った時に、普通の日本人が考えるのは、白人と黒人の二種類くらいのものであろう。実際にはヒスパニックとかアジア系とかユダヤ系とかのさまざまな人種や民族がいることは日本人はあまり考えないのである。

アメリカは多民族国家だと言われる。色々な民族がいるという点では、中国や元のソ連も同じであり、そこでは民族の間の問題が少なくなくて、中には独立したがっている民族もいる。特に東ヨーロッパは昔から民族問題の多い所だったが、90年代に入ってユーゴスラビアでは大きな戦争が起きた。これによって、私達はあらためて民族問題の大切さとむずかしさを知ったのである。

以上の国と比べると、アメリカの場合は少しが違う。アメリカは、歴史的に移民の国であり、今でも外国からたくさんの人々がやって来て、その人々が「アメリカ人になる」のである。国としての歴史はみじかいが、まったく新しい国家の形を示すものだと言える。外国人が日本人になることはむずかしいが、アメリカ人になることは、それに比べればやさしい。アメリカで生まれれば、だれでもアメリカの国せきが持てるし、ある条件があれば、外国人もアメリカ人になれるのである。

始めに書いたように日本人は、そのほとんどが日本民族であり、しばしば「日本は一つの民族から出来上がっている」と言われる。この言い方がまったく間違っているとは言えないが、日本にもは多くなくても、別の民族がいっしょにくらしていることを忘れてはならない。それは中国人であり、韓国人であり、さらに今ではとても少なくなってしまったが、アイヌと呼ばれる民族である。

中国人は日本に十万人ほどいると言われ、横浜(よこはま)や神戸(こうべ)に大きなチャイナタウンを作っていて、かなりの経済力を持っている。しかし「中国系日本人」ということばが使われないことからも分かるように、中国人と日本人の間にはまだ区別が残っている。また七十万人もいると言われる韓国人も大きな経済力を持ち始めているが、昔から差別受けてきた長い歴史があり、今でもまだ社会的にも法律的にも大きな問題が残っている。韓国人の子供が、差別を受けないように、日本人の名前で小学校に通うこともまだあると言われている。またある有名な小説家は、自分が韓国人であることを死ぬまでかくしていたそうである。このようなことが事実だとすれば、大変残ねんである。

アイヌは古くは日本の北の方に住んでいたと言われているが、今では北海道にしか住んでいない民族である。アイヌと日本人との関係は、インディアンとアメリカに来たヨーロッパ人との関係に似ている。つまり、アイヌは日本人に土地を取られ、生活の仕方もだんだん日本人のようになっていき、今ではアイヌ語を話せる人はほんの少ししかいなくなってしまった。北海道を旅行すれば分かることだが、北海道には変わった名前の町が多い。サッポロとかトマコマイとかノボリベツとか、これらは漢字を当てて書かれることも多いが、みなアイヌ語である。

さらに最近では、日本に働きに来る外国人も多くなった。中国(以前から日本にいる中国人とは別に)やフィリピンなどの近い国々からばかりではなく、バングラデシュイランなどからもやって来る。これらの国の人々は、給料が安くて日本人があまりやりたがらないような仕事をしている場合が多い。そしてビザが切れても日本に残って働き続ける人が多いため、大きな問題になっている。これから、このような人々の数はふえることはあっても、へることはあるまい。これらの人々がもう日本の経済の必要な一部分になっているからである。

以上のように、日本にもさまざまな民族問題がある。長い歴史を持つものもあれば、最近になって出てきて日毎に大きくなっていく問題もある。日本の政府や社会が、これらの問題について考える場合に、多民族国家であるアメリカの経験(けいけん)が日本にも役に立つのではないだろうか。