Lesson 3 – Main Text
A Fishing Excursion – つりに行こう
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私は、東京には自然がないと、いつももんくばかり言っているので、東京で生まれたおじが、きれいな川や森のある山の方へ私を連れて行ってくれることになった。おじは自分の車で私のアパートまでむかえに来てくれた。>
山: お早う。もう起きているかな。
春:お早うございます。早いですねえ、僕は十五分くらい前に起きて、はをみがいていたところです。
山: ずいぶんゆっくりだな。おじさんは家で弁当を作ってから出て来たんだよ。
春: でも、まだ暗いですよ。こんなに早く出なくてもいいと思いますが。
山: いや、暑くならないうちに川に着きたいんだ。
春: これがおじさんの車ですか。こんなに古いのに乗るのははずかしいなあ。コロンボの車みたいですねえ。
山: コロンボっていうのは、何だい?
春: え?知らないんですか。アメリカのテレビに出て来るけいじで、日本でも有名ですよ。その人の車が古くて、こしょうばかりしているんですよ。
山: その人は、えらいけいじさんなんだろうねえ。そんなふうに古い物を大事に使っているんだから。
春: けいじとしては、えらいかもしれないけど、お金がないから新しい車が買えないだけですよ。
山: いや、アメリカ人は物を大切にする、と先日読んだ新聞に書いてあった。このごろの日本人は、車でもテレビでも何年か使うとすぐ新しい物に買いかえる。国の経済のためにはいいだろうが、まだ使える物をすてるのは間違いだと思うよ。
春: 今は「使いすて」の時代ですからねえ、ライターでもカメラでも。
<車の中で>
春: 朝早く家を出ると車が少なくて気持ちがいいですね。
山: そうだろう。やっぱり、早く出てよかっただろう?東京の西の方にある秋川という所に行くことにしたけど、道がこんでいないから七時ごろまでには着けるだろう。川に着くまでに、つった魚をだれにあげるか、考えておきなさい。
春: 人にあげるほどたくさんつれるのかなあ。
<秋川に着いて、つりを始めたが…>
春: もうお昼になりましたね。僕が一匹、おじさんはゼロ。今日はだめなようですね。つりはもうやめて、お弁当を食べましょう。
山: いや、そんなまずい弁当はやめよう。魚がつれない上に、私のまずい弁当など食べたくない。私が料理が下手なことは知っているだろう。
春: ええ、上手だとは、決して言えませんね。
山: 春男もずいぶんはっきり言うなあ。…下の方に小さなホテルがあっただろう。ここへ来た時はいつも、あそこにお世話になっているんだ。あそこへ行ってうまいものを食べよう。私の作った弁当は、春男が持って帰って、今晩食べなさい。
春: いりませんよ!
<下のホテルで>
山: ごめん下さい。今日は。村田さーん!
村: いらっしゃい。いやあ、山本さん、よくいらっ しゃいました。
山: ちょっと昼ご飯をごちそうになろうかと思って。
村: さあ、どうぞ。そちらは、むすこさんでいらっしゃいますか。
山: いや、おいの春男です。春男、何をいただこうか。
<ご飯を食べ終わって>
春: どうも、ごちそうさまでした。
村: いえ、いえ。お茶でもめしあがって下さい。山本さん、今日は一匹もつれなくて残ねんでしたね。
山: おいにつりを教えてあげようと思って来たのですが、おはずかしい。
春: 村田さんは十年ほど前に会社をおやめになって、ここでホテルを始められたそうですね。
村: ええ、自然が好きで、こんな不便な山の中に来てしまいました。
春: 十年前と比べて、このへんも変わりましたか。
村: そうですね、私が来たころは、道が悪くて、来る人も少なかったんですが、このごろは夏になると人がたくさん来て、ゴミをそのへんにすてて行く人もいるので、山や川がきたなくなります。人が多いのは、しょうばいのためには、いいのですが、こんなホテルを始めなければよかったと思う時もありますよ。
春: ここへ来る時、トラックをたくさん見ましたが、何をしているんですか。
村: ここから五キロくらい下の方で、ダムを作っているのです。それが出来ると、村が二つほど、水の中にしずんでしまいます。その村の人達は今でも反対しています。
春: 村田さんはそのダムを作ることに賛成ですか。
村: むずかしい問題です。もちろん東京の人々の飲む水が足りなくなったら、困りますが、でもずっと前からそこに住んでいる人達の気持ちもよく分かります。それからダムを作ると自然のバランスが大きく変わってしまうらしいので、心配しているのです。
山: 自然のバランスと言えば、ゴルフ場でくさを取るために使うくすりが問題になっていますね。
春: おじさん、それはどんな問題ですか。
山: 土も本当は生きているんだが、土の中にいるむしなどを殺してしまうので、土の持っている力が弱くなってしまうんだよ。
村: ゴルフ場はなくても、畑でもくさを取ったり、野さいに付くむしを殺すために、強いくすりを使うから、日本中どこでも同じ問題が出て来ていますよ。
山: くすりの問題のほかにも、たくさんの木を切らなければゴルフ場は出来ないのだから、それだけで自然のバランスがおかしくなる、と言われているよ。アメリカなどと違って、せまい土地にいろいろな物をたくさん作るからね。
春: 前は、大きな工場の公害だけが問題になっていたけど、今は別の形の公害もあるんですねえ。