Lesson 5 – Main Text
Cooking Around the World – 世界の料理
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国によってことばが違うように、世界の料理はさまざまです。もちろんだれでも自分が生まれてそだった土地の料理が一番好きなのは当たり前ですが、それ以外に、どこの国の料理が一番好きかと聞かれれば、中国料理かフランス料理だと答える人が多いのではないでしょうか。この二つの国の料理は、世界中で最も人気のある料理です。この二つに比べると、日本料理は世界中に広がるほどの力は持っていないようです。
日本はむかしから、外国の文化を輸入するのが上手で、それは料理についても同じでした。たとえばインドからはカレー(ライス)の作り方を、中国からはラーメンやギョーザの作り方を習いました。しょうゆやみそも中国から来たものです。ただ、輸入されたものはだんだん日本人の好きな味に変わってきて、今ではしょうゆなどは中国と日本とでは、かなり味が違います。またカレーも日本の子供達の最も好きな食べ物の一つになっていますが、インド人のようにスパイスをたくさん使わないので、全く別の料理だと言ってもいいくらいです。
このように日本人はさまざまな料理を輸入してきました。ところが、このごろは反対に日本料理が外国へ輸出され始めました。特に「すし」はアメリカで人気があります。なぜアメリカ人はすしに興味を持つのでしょうか。もちろん、おいしいということが一番の理由でしょう。しかし、もう一つ、「すしはけんこうによい」ということもアメリカ人には大切な点のようです。
最近、アメリカの雑誌が千人の人の一日の食事について調べましたが、それによるとアメリカ人の食事にはかなり問題があることが分かりました。その日に、くだものをぜんぜん食べなかった人が全体の半分、野さいを食べなかった人が四分の一もいたとのことです。
しかし、そのアメリカで日本料理の人気が高くなってきているのは、米、野さい、魚が中心の日本料理の方が、ステーキやハンバーガーよりもけんこうによいのだとアメリカ人が考え始めたからでしょう。食事は、味がいいばかりではなく、えいようのバランスもとても大切です。ある研究によると、一日に三十種類の物を食べるのが理そうだと言います。いろいろな物を少しずつ食べる日本料理は、この点でも、けんこうによいと言えるでしょう。
会話
山: この店のてんぷらは、おいしいでしょう。
ハ: はい、特に野さいのてんぷらがおいしいですね。
山: どんな物でもてんぷらになりますよ。私の家では、ときどき肉も使います。
ハ: 私は肉はにが手なので、それはちょっと…。
山: ハイゼンベルグさんはベジタリアンなんですか。
ハ: 魚やエビは食べますから、ベジタリアンというわけではないんですが。
山: あなたが肉を食べないというのは、宗教と関係があるのですか。日本でも、むかしから仏教のお坊さんは、動物の肉は食べないことになっていました。生きているものを殺すのは、とても悪いことだと考えたからです。ふつうの人は生きるためだから、仕方がないと考えるのですが。
ハ: 私の場合は、ちょっと特別な理由があるんです。高校生の時、いなかへ行って牛の世話を手伝ったことがあるんです。その中の一番小さな牛を、その夏中かわいがって、友達みたいに思っていました。ある晩、牛肉の料理を食べた後で、それが、そのかわいがっていた牛の肉だったと知って、びっくりしました。それから肉が食べられなくなってしまいました。
山:そんなことがあったんですか…その気持ちはよく分かります。
ハ: その後、何度も肉を食べようとしましたが、その牛の顔を思い出してしまって、どうしても食べられません。
山: そうですか…でも、あなたは魚が食べられるのだから、えいようのバランスについては問題ないでしょう?
ハ: そうですね、特に日本ではどこでも魚が食べられるし、とうふのような物もあるので、私には都合がいいです。
山: 日本人もむかしから牛肉を食べていたわけじゃありません。牛肉を食べるようになったのは、明治になってヨーロッパの文化を輸入し始めてからですよ。その前にも、鳥肉などは食べていましたが、食事の中心は野さいと魚だったようです。
ハ: 先日、ある雑誌に魚の大きな絵が出ていて、おもしろそうだったので読んでみました。それによると、ある大学の先生方が江戸時代の地図にもとづいて、東京の土の中を調べているんですが、その中から大きな魚のほねがたくさん見つかるそうです。そのほとんどが「たい」のほねだという話しです。
山: そうですか。日本では「たい」は魚の王様だって言われますが、やはりむかしから人気があったんですね。ところで、魚の食べ方ですが、「たい」のように大きな魚のほねは食べられませんが、小さい魚の場合は、ほねも頭も全部食べてしまうんです。むかしの人はえいようなどということは特に考えていなかったはずですが、そうやってカルシウムを取っていたわけです。
ハ: アメリカでは、魚はどちらかと言えば高級な食べ物で、毎日のように食べるわけにはいきません。
山: 日本では反対ですね。牛肉が今でも高級品で、ステーキを食べようと思うと、先ずねだんの心配をしなければなりません。
ハ: でも私は、牛肉のような「たんぱく質」よりは、魚やとうふのような「たんぱく質」を取ったほうが、けんこうによいと思います。だから肉のねだんが高いというのは、日本人には、むしろいい事のように思います。
山: そうでしょうかねえ。
ハ: 日本の料理について、一つだけ気になることがあります。それは、しおやしょうゆを使いすぎるのではないか、という点です。町の食堂などの「みそしる」は、ときどきしょっぱくて、飲めないことがあります。
山: そうですね、ラーメンのスープなども、おいしいから、私はつい全部飲んでしまいますが、ちょっと気をつけた方がいいですね。日本料理にも問題がないわけではないんですねえ。